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grip-and-grin ~記念撮影は笑顔で握手! (米朝首脳会談が開催へ) [辞書に載っていない表現]

トランプ大統領と金正恩委員長との2回目の首脳会談が開かれる。CNNのウェブサイトで関連の記事をながめていたら、grip-and-grin というちょっと面白い表現が出てきたので、取り上げてみよう。

去年開かれた1回目の首脳会談で一触即発の緊張は解けたものの、北朝鮮の核廃絶は実質的な進展がないままだ。今回、はたして具体的な成果はあがるのか、思いつきで事を進めがちなトランプが過度の譲歩をするのではないか、そういった懸念があることを伝える記事である。

そこで使われていた grip-and-grin だが、個々の単語と文脈から、お互いに笑って握手を交わしたことを指しているとあたりがつく。

- What began eight months ago in Singapore as an audacious first-ever grip-and-grin between a sitting US president and North Korean leader has yet to yield discernible strides in the effort to rid Kim Jong Un of his nuclear weapons. Expectations this time are low that the two leaders will forge significant progress.
("High stakes, low expectations for second Trump-Kim summit" CNN February 25, 2019)

手持ちの辞書には載っておらず造語かとも思ったが、オンラインの辞書にあたったところ、数は少ないもののまとまった表現として載せているものがあった。

- (plural grip-and-grins)
(colloquial) An event at which one is expected to smile and shake hands for a photograph.
(colloquial) A photograph of people looking towards the camera and smiling while they shake hands, typically taken at such an event.
(Wiktionary)

- A photo op or other media event in which a famous person shakes someone's hand for the camera.
(Urban Dictionary)

また「英辞郎」にも

- 〔カメラ向けの〕作り笑顔 首脳会談前の握手や式典でのテープカットなどで、外交辞令としてカメラに向かってふりまく笑顔。【語源】grip(カメラを構える)and grin(ニコニコ笑う)
(形)〔カメラ向けの〕作り笑顔の、外交辞令としての

とあった。

ただ「作り笑顔」という訳語は、「作り笑い」と似たものと考えると否定的なニュアンスを感じさせかねず(確かに実態はそうなのだろうが)、誤解を招く場合もありはしないだろうか。

また実例や英語圏の辞書にある語義から考えると、どちらかといえば笑顔そのものというより、そうした場を含めた広めの意味に取れる。さらに由来として grip を「カメラを構える」としているのも、私が想像したように「手を握る」ことだと説明している英文が他にもあり、本当のところはどうなのだろうと思わされる説明である。

ついでだが上記 Urban Dictionary に出てくる photo op とは、行事に参加した要人や有名人をカメラマンが撮影するために設定された時間を指す。op は opportunity を略したものだ。

「英辞郎」にも書かれているが、たとえば重要な会議の開始前に、絶え間ないフラッシュを浴びながら参加者同士が(作り)笑顔を浮かべて握手をしている例の場面である。スチル写真のために、皆たいがい手を上下せず握ったままじっとしているのが何だかおかしい。

ネットで grip-and-grin の実例をさらに探してみよう。

- For decades, the traditional grip-and-grin photograph has been a standard part of most presidential meetings, and even today it has attributes that recommend it. Unlike the selfie, posed photos taken by the president’s official photographer are almost always in focus and sometimes include a presidential autograph.
("A problem that Obama must face down him-selfie" The Washington Post June 24, 2016)

また長くなるので引用はしないが、「作り笑い」が実態ということか、この grip-and-grin を「お決まりの」「不自然な」「つまらない」といった文脈で使っている記事がかなりあるようなのは、やはりというべきか。

さらに、この表現がハンティングや釣りのサイトでも使われているのに気づいた。こちらの grip は捕まえた獲物を手にするという意味に取ればいいのだろうか。「作り笑い」と違って「誇らしい」記念写真である点もイベントや会議のそれとは異なる。たとえば、

- The proverbial “grip and grin” is a time-honored tradition that we hunters take a lot of pride in. It is our attempt to capture in a single moment something that often takes weeks of immense mental and physical strain to accomplish.
("Grip & Grin Photography" Outdoormans October 16, 2018)

余談だが、grin はかつて(そして今も?)「にやりとする」という訳語が定番だった。私もそれで覚えてしまい、そのイメージを払拭 unlearn するのに手こずった。翻訳ものの小説でよく目にして、「あちらの人たちはやたらとニヤッと笑うんだなあ」と思った記憶もある。

英語圏の辞書には smile widely などと書かれているが、私が持っている英和辞典の中では、「スーパーアンカー」の

- (声を立てずに)歯を見せて笑う(にこにこする)、にやっとする(笑う)(smile よりも口を左右に大きく開いて笑うことで、大喜び・満足などの表情だが、ときに歯をくいしばる表情にも用いる)
grin broadly [from ear to ear] 満面の笑みを浮かべる

という説明が一番ていねいだと感じた。「にやり」という訳語だけで覚えると、grin も皮肉などが混じった笑いのことだと思い込みかねないので、注意が必要だろう。


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