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abracadabra 「アブラカダブラ」「ちんぷんかんぷん」 [英語のトリビア]

先日 hocus-pocus という単語を取り上げた際参考としてあげたサイトにも載っていたが、同じく呪文の言葉に abracadabra がある。

「ホーカス・ポーカス」は木村カエラが歌にしていると書いたが、「アブラカダブラ」といえば、私は米米CLUBの往年のヒット曲を連想してしまう。

この単語には、「呪文」のほか、「わけのわからない言葉」という意味がある。

映画が50周年を迎えたジェームズ・ボンドものの短編 From a View to a Kill (邦題「薔薇と拳銃」、短篇集 For Your Eyes Only 所収)に次のようなくだりがあった。なおこの作品のタイトルは映画(邦題「美しき獲物たち」)に使われているが、両者のストーリーに関連はない。

- He was handed over to a red-capped British MP and led off down the main corridor past endless office doors. They bore no names but the usual alphabetical abracadabra of all headquarters. One said COMSRIKFLTLANT AND SACLANT LIAIASON TO SACEUR. Bond asked what it meant. The military policeman, either ignorant or, more probably, security-minded, said stolidly: 'Couldn't rightly say, sir.'
(Ian Fleming: From a View to a Kill)

建物の中にあるオフィスのドアに掲げられている部署の名前は、どれもアルファベットが並んだだけの意味不明なものばかりだった、といったような意味だろう。

辞書の説明と用例を抜き書きしよう。

- 1. アブラカダブラ(魔除けとして文字を逆三角形に並べて書いた呪文)
2.(魔法使いや奇術師の唱える)呪文
3. わけのわからない言葉、ちんぷんかんぷん
4.(難事を信じがたいほど)やすやすとやってのけること
(ジーニアス英和大辞典)

- the legal abracadabra ちんぷんかんぷんの法律用語
(ランダムハウス英和大辞典)

「逆三角形の文字を並べて書いた呪文」だけでは何のことかよくわからない。そこで、例えば日本語版の「ウィキペディア」を見ると図が載っていて、なるほどこういうことかとわかる。また、由来についてもいろいろな説が載っている。

由来のひとつに、「グノーシス主義の文献に登場するアブラクサスを語源とする説」があげられていたが、どこかで「アブラクサス」という言葉を聞いたという記憶がある。

しばらく考えて、高校生の時に読んだドイツの作家ヘルマン・ヘッセの小説「デミアン」に出てきたことを思い出した。

中学生から高校生にかけて、世界文学の名作として知られるヘッセの作品をいくつか読んだが、どれもあまりピンと来なかった。しかし、「デミアン」は例外で、なぜか惹かれるものがあったのは以前ちょっと触れたことがある。のちに英訳書も買ってしまったほどである。

当時読んだ文庫本の翻訳はもう手元にはないが、書棚にはページがすっかり茶色に変わったペーパーバックがまだ残っている。それを引っ張りだしてページを繰り、「アブラクサス」が出てくる一節を探したら、見つかった。

- The bird fights its way out of the egg. The egg is the world. Who would be born must first destroy a world. The bird flies to the God. That God's name is Abraxas.
(Hermann Hesse: Demian)

「鳥はもがき苦しんで卵から抜けだそうとする。卵は世界である。生まれ出ようとするものはひとつの世界を壊さなければならない。 そして鳥は神のもとへ飛んでいく。その神の名はアブラクサスという」といった感じか。

翻訳を読んだ当時も何のことかわかってはいなかったが、「神、太陽、天使、デーモンを象徴する古代の神霊の名前」というアブラクサスの説明(「ウィキペディア」)をあらためて見た今も、やはりわからない。

そうではあるけども(今の人たちはどうかわからないが)、あの年ごろはよくわからないものに惹かれるものだ。「デミアン」も、あの時に読んだから良かったのだろうと思い返す。

ということで、007、ヘルマン・ヘッセと洋物の小説から米米CLUBの歌まで、幅広く見られる abracadabra なのであった。

英語によるこの単語のまとまった説明はいろいろ見つかるが、American Heritage Dictionary から、ちょっと長いが引用したい。「逆三角形」を英語でどう言い表しているかも参考になる。

- "Abracadabra," says the magician, unaware that at one time the thing to do with the word was wear it, not say it. Abracadabra was a magic word, the letters of which were arranged in an inverted pyramid and worn as an amulet around the neck to protect the wearer against disease or trouble. One fewer letter appeared in each line of the pyramid, until only a remained to form the vertex of the triangle. As the letters disappeared, so supposedly did the disease or trouble. While magicians still use abracadabra in their performances, the word itself has acquired another sense, "foolish or unintelligible talk."

さらに詳しくは、冒頭に記したサイトの他、次なども参考になる。

http://www.worldwidewords.org/qa/qa-abr1.htm

http://en.wikipedia.org/wiki/Abracadabra

「わかのわからない言葉」はこのほかにもいろいろあり、後日取り上げたい。

参考記事:
hocus-pocus 「チチンプイプイ」「ぺてん、作り話」
「ライ麦畑」と「キャッチャー」


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