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シェイクスピアの名セリフ my kingdom for horse の応用(高橋留美子「めぞん一刻」 英語版) [読書と英語]

日本のマンガ史に残る名作だと思っている「めぞん一刻」の英語版からこのところ表現を拾っているが、前回の映画「カサブランカ」に続き、今度はシェイクスピアの名セリフを下敷きにしたうまい英訳を見つけた。

これまで取り上げた表現は、まだコメディ色が強かった最初期のエピソードからだったが、今回は、マンガの枠を越えた文学作品といってもいいほどに深化した終盤のストーリーに出てくる。

紆余曲折のすえ保育士の試験に合格した主人公の「五代くん」が、下宿しているアパートの住み込み管理人であるヒロイン「響子さん」に公衆電話で報告して、そのまま電話口でプロポーズすることを決める(2人はすでに恋人同士になっている)。

ところが、合格したという報告や「おめでとうございます」といったやりとりを交わしてから、「あの、響子さん、ぼくと、け・・・」とまで言ったところで通話時間が終わり、電話が切れてしまう。あらためて硬貨を入れて電話をかけ直そうとポケットをさぐるが、「十円玉がきれた・・・」とつぶやき、結局プロポーズできないままに終わる。

このエピソードに限らないが、しんみりした(時には泣けるような)ストーリーを展開しつつ、照れ隠しのようにちょっとユーモラスな場面を挿入する。このへんの技が高橋留美子は天才的だ。

ここではまず英語よりも時代背景の説明が必要かもしれない。このマンガは連載時期と同じ1980年代を舞台としている。携帯やスマホは影も形もなく、家庭やオフィスにある固定電話か戸外の公衆電話が連絡手段だった。公衆電話はテレホンカード型が普及するまでは硬貨式ばかりで、五代くんと同世代の私も、いつも財布には10円玉を何枚か入れておくようにしていた。今となっては遠い昔のことになってしまった。

それはともかく、五代くんのセリフは英語版では次のようになっていた。

- Um...Manager...? ...W-W-Would you m-
(電話が切れ、追加の硬貨もないことに気づいて)
No. No. My kingdom for ten yen...

これは、シェイクスピアの「リチャード3世」 Richard III に出てくる

- A horse! A horse! My kingdom for a horse!

のもじりであることは明白だ。

・・・とエラそうに書いたが、私は原文はもちろん翻訳でもこの作品を読んだことはない。高校生の時だったか、「交換」「対価」を意味する for の用法を学んだ際に例文として出てきたのがこのセリフで、印象深かったので今でも覚えているのだ。

リチャード3世は戦場で自分の馬を失った時にこの言葉を叫ぶ。「馬だ、馬をくれ、馬の代わりに俺の王国をくれてやるぞ!」。こうした for は「~と交換に」「~と引き換えに」という意味で、「馬のための王国」なんてバカな訳はしないように。・・・そんなことを教えられた。

単に「十円玉が切れた・・・」というだけの「めぞん一刻」の元セリフだが、これを直訳するのではなく、馬を失って最期を迎えようとするリチャード三世の言葉を使うことで、英語圏の読者には主人公の”残念無念”ぶりがよりリアルに伝わるのではないか。ネイティブスピーカーでないとなかなか思いつかないことだろう(英語版にはスタッフ一覧が載っていて、翻訳者としてネイティブおよび日本人とみられる名前がある)。

シェイクスピア由来の今回の表現について、オンライン辞書には次のような説明が載っていた。例文から察するに、日常生活のちょっとした場面でも気軽に使えるようだ。

- my kingdom for a horse
I would give all that I have for the thing that I currently lack. The phrase comes from Shakespeare's Richard III, when the title character bemoans his lack of a horse in the midst of a losing battle.
I'm so thirsty—ugh, my kingdom for a horse! Or, better yet, for a drink of water!
(Farlex Dictionary of Idiom)

ここまで書いて、以前この表現を取り上げたような気がして検索したら、このブログを始めたばかりのころ、horse 関連の表現をまとめた際にすでに触れていた(→ 続・horse にちなんだ表現)。それでも、日本のマンガの英訳に英語圏の文化背景が顔を出した面白い実例としてアップすることにしたい。


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