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映画「カサブランカ」の名セリフ of all the gin joints...の応用 (高橋留美子「めぞん一刻」 英語版) [映画・ドラマと英語]

前回、高橋留美子の「めぞん一刻」の英語版から表現を取り上げたのをきっかけに、この名作マンガを英語で再読しているが、映画「カサブランカ」に出てくる名セリフを利用したうまい英訳があったので、取り上げたい。

最初期のエピソードに出てくるもので、浪人中の主人公「五代くん」が第一志望の大学の入学試験を受けたものの、あまりに難しかったので途中で断念して退出し、街の大衆食堂で食事をしていたところ、彼があこがれているヒロイン「響子さん」がその店に偶然入ってきた、という場面である。

主人公は心の中で、「な、なんで響子さんがここに…!?」と驚きの言葉をあげるのだが、この独白が英語版では次のようになっていた。

- Why here...? Of all the lunch joints in the world...

これは明らかに映画 Casablanca のセリフを下敷きにしたものだ。英語圏の文化的背景を持つ人に受け入れやすく、またある意味、原作の日本語以上に面白いセリフになっているのではないか、「座布団一枚!」と感心した。

往年の名画「カサブランカ」は繰り返し観ている私のお気に入りで、このブログでも過去何度か取り上げたことがある(例えば→ 実在しない名セリフ (映画「カサブランカ」など))。出てくる数々の名セリフもよく知っているつもりで、今回の英訳も最初に読んだ時に気づいたはずだが、記憶になかったので新鮮だった。

映画の舞台は第二次大戦中のモロッコのカサブランカ。ハンフリー・ボガート演じる Rick が経営する酒場に、かつてパリで愛し合ったものの突然姿を消した女性 Ilsa (イングリッド・バーグマン)が偶然やってきて、運命的な再会を果たす。

店の営業が終わった深夜、酒を飲みながらリックがつぶやくのが、

- Of all the gin joints in all the towns in all the world, she walks into mine.

直訳すれば、「世界中の街という街にある酒場の中で、彼女が入ったのは俺の店だった」といった感じだろうが、しばしば、「世の中に山ほど酒場はあるのに、こともあろうに俺の店にやってくるとは」とか「酒場は世界中に星の数ほどあるのに、なんでよりによって俺の店にやってきたんだ」というような形で訳されていると思う。



Of all the (gin joints) in all the (towns) in all the (world) という繰り返しが印象深い。また理屈からいえば walked と過去形にすべきなのだろうが、彼女はカサブランカにやってきて、今もこの街にいる。その気持ちが現在形に表れているのではないか、というのが英語の専門家ではない私の勝手な解釈である。

「めぞん一刻」に話を戻すと、響子さんは五代くんが下宿しているアパートの住み込みの管理人で、当日が彼の入試の日だと知っていた。試験を途中で断念して隠れるように食事をしていた(しかも響子さんに似つかわしくない)大衆食堂にまさか彼女が入ってくるとは、と驚愕するほかなかったのだが、これが「カサブランカ」の有名な(かつ、大げさでクサい)セリフを利用することで効果的に表現されているわけである。

今回のセリフは、実は数か月前にこのブログで紹介した The Unknown Unknown (参考→ serendipity, chance encounter 「偶然の出会い」「セレンディピティ」)でも使われていた。デジタル書籍の時代にあって、書店での紙の本との出会いの大切さを説いたエッセイ本である。

そのくだりで著者は、”恋愛もの”の物語に出てくる男女は、最初はお互いに関心を持っていなくても、後に運命のように惹かれあうのがお決まりだ、としたうえで、書籍との出会いもそれと似たような点がある、と述べている。

下記の they はそんな男女のことで、ロミオとジュリエット、そして「カサブランカ」のリックとイルザなど具体的な例をあげたうえで、こうした出会いについて次のように書いている。

- It's the basic formula of any romance. They never want at first, but of all the gin-joints in all the towns in all the world, you accidentally walked into this one.
Or, for the purpose of this essay, of all the bookshops, in all the towns, in all the world, you accidentally walked into this one, and accidentally fell in love with this particular book.
(The Unknown Unknown by Mark Forsyth)

ところで、今回のセリフに出てきた joint とは、「(人が集まる)場所」「安レストラン」「(もぐりの)酒場」「(うさんくさい)遊興街」「市やサーカスなどの売店」といった意味である。「カサブランカ」を観ていなければ、この単語にこんな意味があることはなかなか知る機会がなかったのではないかと思っている。

余談だが、上に貼り付けた Youtube の画像でもちょっとわかるように、このセリフのすぐ後にセンチメンタルな名曲 As Time Goes By が流れる。そしてパリの回想シーンに続く。今の時代の冷静な眼から見ると何ともベタでクサい演出だが、私は昭和世代だし、映画好きの両親からさんざん「すばらしい作品だ」と聞かされていたので、高校生の時にテレビで初めて観た時は、やはり名作だと思った。

それから何年も経って初めて訪れたアメリカで、たまたま”往年の名画”を続けて上映していた映画館があって「カサブランカ」の回をわくわくしながら観たが、館内の若い(といっても当時の私とほとんど年齢は変わらない)人たちが、”名セリフ”が出るたびに、「ハハハ」と笑ったり「オー」と声をあげて舌打ちをしたりしていたので驚愕した。

彼の国では、すでにお笑いの対象になる古臭いメロドラマという扱いになってしまっていたのか。初めて大スクリーンで観た「カサブランカ」は、アメリカに抱いていた幻想を破るような興ざめの体験だった、というのはちょっと大げさかな。

過去の参考記事:
実在しない名セリフ (映画「カサブランカ」など)
knock on wood
serendipity, chance encounter 「偶然の出会い」「セレンディピティ」
unknown unknown 「知らないということに気づいていないこと」
physical book 「紙の本」

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