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「すべての爆弾の母」は誤訳か? (the mother of all ~ その2) [翻訳・誤訳]

先週、アメリカ軍が通常兵器では最も破壊力の高い爆弾を対IS作戦で使ったと報じられたが、この兵器について一部のマスコミが「”すべての爆弾の母”と呼ばれている」と伝えていた。これを見てすぐ、「the mother of all... というイディオムの直訳だな」と思った。このブログを始めたばかりのころ取り上げた表現でもある(→ 母ではない mother)。

その時の復習になるが、the mother of all... とは「最高・最大の~」「とてつもない」を意味する表現だ。イラクのサダム・フセイン大統領が使った言葉(アラビア語)が由来らしいという説があることも当時書いた。

以下は英語圏の辞書から引用である。

- something regarded as the biggest, most impressive, or most important of (its kind) often used humorously
the mother of all yard sales
(Webster’s New World College Dictionary)

- used to say that something is larger, better, worse, etc., than all other things of the same kind
It has been described as the mother of all construction projects.
(Merriam-Webster.com)

今回、アフガニスタンでイスラム国に対して使われたのは「大規模爆風爆弾兵器」 Massive Ordnance Air Blast (略称 MOAB)が正式名称で、これをイディオムにひっかけて Mother Of All Bombs というニックネームをつけたのだろう。実戦では初めての使用となるそうだ。

- The US military dropped America's most powerful non-nuclear bomb on ISIS targets in Afghanistan Thursday, the first time this type of weapon has been used in battle, according to US officials.

A GBU-43/B Massive Ordnance Air Blast Bomb (MOAB), nicknamed the "mother of all bombs," was dropped at 7:32 p.m. local time, according to four US military officials with direct knowledge of the mission.
("US drops largest non-nuclear bomb in Afghanistan" CNN April 14, 2017)

意味的には「最強の爆弾」「スーパー爆弾」であることを示しているが、「すべての爆弾の母」はコテコテの直訳といえそうで、日本語には同じような表現がないこともあり、日本人には奇異に響くのではあるまいか。

では、ネイティブスピーカーはイディオムの類を字面(じづら)通りに受け取っているのだろうか。今回の表現ではないが、日本語が堪能なネイティブスピーカーの視点で英語学習書を書いているマーク・ピーターセン教授が、あるアメリカの小説の翻訳について、次のように書いている。

- like a bat out of hell (猛スピードで)などのような普通の慣用表現が、「地獄の蝙蝠みたいに」のように、文字通りに訳されている(中略)。単なるイディオムにすぎず、使う人は別にコウモリを思い浮かべながら使っているわけではない。文字通りに訳されると、まるで日本の小説で主人公が「畜生!」と叫んだら、この台詞が英語版では "Animals!" となっているような感じだ。
(「ニホン語、話せますか?」 マーク・ピーターセン)

確かに日本語の慣用表現を使う時も、その文字通りのイメージを思い浮かべることはまずないだろう。あらためて字面を見て考えれば、笑いたくなったり不思議に思ったりすることはあるかもしれないが。

そう考えると、「すべての爆弾の母」は誤訳、というのが言い過ぎであれば、誤った印象を与えるもので、十中八九イディオムであることを知らないで訳したということもいえそうだ。

ただ一方で、たとえネイティブは文字通りの意味を意識せずに使っていたとしても、思いがけない単語を使う表現が外国語にあるということに気づくのはおもしろいものだ。言葉への興味をかきたててくれるものになる。

10年前に取り上げたときにも書いたように、私が今回のイディオムを知ったのも、まさに直訳の日本語を何かで読んで不思議に思ったのがきっかけだったので、その点で、この程度ならあまり目くじらを立てるのもどうかという気にもなる。

さらに、私の読んだ由来が正しければ今回の表現は英語本来の慣用表現ではないので、こうした言い回しにネイティブも新鮮な感覚を抱いたのかもしれない。

ということで、今回の記事に接して、私自身どのようにとらえたらいいのか、ちょっと考え込んでしまったしだいである。

参考記事:
マティス国防長官のあだ名 mad dog は「狂犬」でいいのか?


ニホン語、話せますか?

ニホン語、話せますか?

  • 作者: マーク・ピーターセン
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/04/22
  • メディア: 単行本



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