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マティス国防長官のあだ名 mad dog は「狂犬」でいいのか? [ニュースと英語]

トランプ政権の閣僚が初来日する。そのマティス国防長官については、大統領が発表時に紹介した "Mad Dog" に度肝を抜かれたのか、日本のマスコミも「狂犬」というニックネームをこぞって使っている。しかしプロフィールなどを読んだら、はたして「狂犬」ととらえていいのだろうか、と疑問に思った。

その任命表明は、就任前のトランプが去年12月に行ったものだが、下記に引用するように芝居がかっていたこともあってか、よけいに印象深いものとなった。

- "Don’t let it outside the room, you promise? We are going to appoint ‘Mad Dog’ Mattis as our secretary of defense. But we’re not announcing it until Monday, so don’t tell anybody. Mad Dog! He is great.”

mad は「狂っている」、だから「狂犬」で何がいけないんだ。そう言われそうである。

何せアフガニスタンやイラクでの戦争を現地で指揮した筋金入りの元軍人(最精鋭といわれる海兵隊の大将)なのだ。それだけでも凄いのに、「狂犬」というあだ名まで持っているとあっては、何をしでかすかわからない好戦的なイメージが浮かんでくる。よりによって、そんな凶暴な元職業軍人を国防長官に据えるとは・・・。

しかし、James Mattis 氏のプロフィールなどを読むと、脳ミソまで筋肉でできている”戦闘マシン”とは違うらしいことに気づく。それどころか、怪しげな人物すら起用されているトランプ政権の中では、もっともまともな人物のようにも感じられる。

水責めの拷問(参考→ waterboarding ~トランプ氏「水責めを復活せよ!」)には否定的で、ロシアに警戒感を持っているということで、そうした点ではトランプと考えを異にしている。

なるほどマスコミでも取り上げられたように過去には勇ましい発言もしているが、猛者である一方で大変な勉強家だという。勇猛果敢にして知性も兼ね備えた、日本風にいえば「文武両道」に秀でた猛将かつ知将であるようなのだ。

「コスモポリタン」は、このニックネームの由来について次のように書いている。

- He's earned the nickname in part due to his straight-talking personality, "combative nature," and the fact that he openly discusses the brutality of war — for better or worse. However, he's reportedly not a huge fan of the nickname, which NBC reports is likely because it suggests he's far less strategy-focused and cerebral than he really is."
("Who Is Gen. James Mattis? 10 Things to Know About Trump's Pick for Secretary of Defense." Cosmopolitan Jan 20, 2017)

これによれば、ご本人は「狂犬」というあだ名をあまりに気に入っていないらしい。ちゃんと cerebral 「脳ミソがしっかり詰まっている」のに、それと逆の印象を与えるからだ、と考えているというのがおもしろい。

また下記の「ワシントン・ポスト」の記事も、この "Mad Dog" は身内(海兵隊)のホメ言葉を献上したものとしている。つまり、部外者が「何をやらかすかわからない戦争屋」という意味でつけたのではないことになる。

- The nickname stuck to Mattis following the second battle of Fallujah, the hardest fight of the Iraq War. Here’s the Los Angeles Times, in a profile about the “confident, jaunty” general in April 2004, a few months before the battle: “Behind his back, troops call him ‘Mad Dog Mattis,’ high praise in Marine culture.”
("Mad Dog, as in ‘Mad Dog’ Mattis: The colorful history of a great American nickname" The Washington Post December 2, 2016)

この記事は、同じく Mad Dog というアダ名をつけられた他の人物やコミックスを含む架空のキャラクターについても触れている。

そうした記述を読むと、どうやら mad dog は、単純に直訳の「狂犬」という日本語(のイメージ)と一対一の関係で考えるとまずいケースもありそうだ、と思えてくる。さらに、今回のマティス訪日に際して、日本のマスコミが「”狂犬”がやってくる」といったトーンで報じているのを見ると、どうも違和感を抱いてしまうようになる。

だからといって、じゃあ誤訳なのか、ならばどう翻訳すればいいんだ、と言われるとすぐに答えられないのが苦しいところだ。「狂犬」であって「狂犬」ではない。そんな感じで、異なる言語や文化の間に横たわる溝を覗き込んだような気がする。「猛犬」ならまだましだろうか。

ちなみにマティスのもうひとつのアダ名は Warrior Monk 「戦士にして修道士」だそうだ。これは独身であること(つまり軍に人生を捧げてきたこと)、また「脳みそ」を使って緻密冷徹に戦術を考える指揮官であること、そしてそうしたストイックさを示す絶妙なニックネームであるように感じる。

今後、マティスが想像されるような「良識派」としての存在を閣僚として果たしていくことになるのか、また、こちらの方がむしろ「狂犬」のニックネームにふさわしそうな親分トランプとの関係がどうなっていくのか、ひとつの注目点になりそうだと思った。

なお余談だが、「狂犬病」にあたる英語は、以前取り上げたことがあるように(→ rabid dog ~"お騒がせ"候補ベン・カーソン氏、難民問題を狂犬病にたとえる」)、mad dog とは違う表現がある 。

また、「好戦的」「戦争屋」ということから、war-monger また trigger-happy という単語を連想したので、参考までに付記しておきたい。


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通りすがり

狂犬でいいじゃないですか。

この件に関してはあちこちで「誤訳」とか「マスゴミの作為を感じる」とか言われてますが、マティス氏と一緒に戦った兵士たちが敬意を込めて狂犬と呼んだなら別におかしいとは思わない。とかく戦場では、狂ってるくらいの卓越した統率能力こそ部下たちの信頼を得るのではないでしょうか?

その渾名をマティスさん自身は好きではないこと、部外者ではなく部下たちが命名したこと、これこそmad dogが狂犬であることの証ともとれますが。

他で言われてる「勇猛果敢」「猛犬」などの無難な意訳よりはよほど、優秀な将軍の異名として相応しい。

狂犬の名で畏怖され、一方で「戦う修道士」の名で讃えられる、その二面性、ギャップがまたいいんじゃないでしょうか。
by 通りすがり (2017-02-18 21:53) 

tempus fugit

mad dogと「狂犬」はニュアンスが違うのではないだろうか、であれば「狂犬」でいいのだろうか、と思ったので書いてみました。あくまで私個人が抱いている「狂犬」のイメージにすぎない、と言われればそれまでですが・・・。

長くなるので本文には書きませんでしたが、mad にはwild とか uncontrolled という意味もあります。mad dog はその意味でつけられたのだろうと思いますが、これに「狂」はふさわしくないように感じています。

そうした「狂犬」を見出しに取ることで、「常軌を逸したトランプ」という見方を増幅したいかのようなメディアの伝え方に居心地の悪さを感じたこともあります。

極端な例ですが、イギリスのpublic schoolは「公立」ではなく「私立
」である、というように、日本語と原語のズレは常に悩みの種です。自分の英語学習を振り返ると、新しい単語表現を覚えることとあわせて、こうしたズレに気づき修正していていくことも重要な要素になっていると感じてきました。そんな考えが頭にあるのも、今回のエントリにつながったのかもしれません。




by tempus fugit (2017-02-19 09:43) 

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