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真実なんて意味ないさ ~ post-truth (オックスフォード版・2016年の英単語) [Word of the Year]

「今年の単語」選定の本家と目されるアメリカ英語学会が「2016年の言葉」に選んだ dumpster fire を前回紹介したが、辞書で有名なオックスフォード出版が選んだのは post-truth だった。個人的には、こちらの方が時代の潮流をよりうまく切り取っているように感じる。

前回も書いたように post-truth はアメリカ英語学会の選定でも部門賞に選ばれ(Political Word of the Year カテゴリーの1位)、受賞は逃したものの大賞の候補にもなっていた。その広報文にあった定義の方がシンプルで、ぱっと読む分にはわかりやすそうなので、まずはこちらを引用しよう。

- post-truth: belonging to a time in which facts matter less than beliefs and emotions.
http://www.americandialect.org/wp-content/uploads/2016-Word-of-the-Year-PRESS-RELEASE.pdf

順序が逆になったが、オックスフォードが去年11月に発表した "Word of the Year 2016" の説明をウェブサイトから引用しよう。

- After much discussion, debate, and research, the Oxford Dictionaries Word of the Year 2016 is post-truth – an adjective defined as ‘relating to or denoting circumstances in which objective facts are less influential in shaping public opinion than appeals to emotion and personal belief’.
https://en.oxforddictionaries.com/word-of-the-year/word-of-the-year-2016

つまり、世論形成のうえで事実が絶対視されず感情や信条(思い込み、というべきか)の方が重要視されるような状況、客観が価値を持たなくなり主観がモノをいう時代、を指すようだ。「正義は勝つ」という言葉をもじれば「真実は勝てない」、乱暴に言えば「真実なんかどうでもいい」「事実なんてクソ食らえ」、ということになるだろうか。

オックスフォードによれば、この言葉が最初に使われたのは1992年までさかのぼることができるそうだが、今回の選定につながったのは、やはりイギリスの Brexit とアメリカ大統領選挙だったという。

- The concept of post-truth has been simmering for the past decade, but Oxford shows the word spiking in frequency this year in the context of the Brexit referendum in the UK and the presidential election in the US, and becoming associated overwhelmingly with a particular noun, in the phrase post-truth politics.
(ibid.)

SNSが日常生活の一部となった今、「ネットに書かれていた」というだけで、それが本当かどうかわからない、あるいは確かめようとしないまま、事実と同じように扱ってしまう。客観的な事実に基づいて理性で判断するのではなく、感情に訴えるポピュリズム的手法に影響される。そんな時代にわれわれは生きているということになるのだろう。今回の選定を報じる「ワシントン・ポスト」の記事は、

- It's official: Truth is dead. Facts are passe.
("‘Post-truth’ named 2016 word of the year by Oxford Dictionaries" The Washington Post, Nov. 16, 2016)

「真実は死んだ。事実は時代遅れと化した」と、まるでニーチェの言葉のような印象的な書き出しで始まっていた。

ところで今回の post-truth は去年発表された時に日本のメディアやウェブも取り上げていたが、「真実後」「ポスト真実」「脱真実」などと紹介されていた。

確かに post- は「~後」ということだし、また私が大学生の時には「脱工業化社会」 post-industrial society という言葉が流行ったように、「脱~」という訳語も知られていると思う。

ただ英和辞典を見ると「~後」の意味しか載せていないものばかりだった。英和のみならず、英語圏の辞書も同様である。ウェブには、英語ネイティブと思われる人からも「post-truth の post- とはどういう意味か」という質問が出されていたくらいである。そのためか、今回のオックスフォードの発表文には接頭辞 post- についても説明したくだりがあった。

- The compound word post-truth exemplifies an expansion in the meaning of the prefix post- that has become increasingly prominent in recent years. Rather than simply referring to the time after a specified situation or event – as in post-war or post-match – the prefix in post-truth has a meaning more like ‘belonging to a time in which the specified concept has become unimportant or irrelevant’.

これが「脱~」に当たる意味と思われるが、オックスフォード自身、手持ちのOALDやウェブ辞書にある post- の項を見ると "After in time or order" としているだけで、まさに先に書いた”英語圏の辞書”の例となっていたのがちょっと残念だ。

いずれにせよ、post- と truth の組み合わせが一見そぐわないように感じられるので、特に非ネイティブにとっては、この言葉が使われている内容とあわせて考えないと意味が取りにくいことは確かだと思う。

なお上記「ワシントン・ポスト」の記事には、「post-truth を truthiness と混同するなかれ」という話が出てくる。

- For what it's worth, “post-truth” is not to be confused with “truthiness,” a subtly different term popularized by Stephen Colbert more than a decade ago that described the phenomenon of “believing something that feels true, even if it isn't supported by fact.”

truthiness はこのブログを始めて間もないころにちょっとだけ触れたことがあるが(→ こちら)、私自身しっかり意味を把握していないので、post-truth とあわせてもっと実例に触れていく必要があると思っている。

ともあれ、そもそもネットには玉石混交の情報が溢れていたのに、いまや fake news といった悪意のあるなりすましニュースすら登場している。「デマ」自体は昔もあったが、今や立ち止まって考える余裕もないほど次から次へと情報が流れてくる。こうした post-truth 社会や政治の行き着く先はどうなるのだろうか。

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