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安倍総理のアメリカ議会演説を読んでみた (spend a spell 「時を過ごす」) [日本のニュース]

安倍総理が先日アメリカ議会で行った演説のテキストを読んだ。戦後70年という節目が背景にあったのだろうか、議会側が招請したという。英語についてのブログなので政治的な感想には立ち入らないことにするが、演説としてはよくできたものだったと思う。

アメリカを持ち上げる内容だったのはまあ当然といえるだろうが、安倍氏本人の体験を交えた個人的なタッチを感じさせるものになっていたし、アメリカ流スピーチでは"お約束"となっているジョークも織り込んでいた。"官僚の作文"とはひと味違っていたのは、民間出身の補佐官がスピーチライターだったことが大きいのだろう。

「首相官邸」公式サイト ( http://www.kantei.go.jp/ ) にある原文(英語)と日本語を比べると、最初から英文で(あるいはそれを意識して)書いたらしいところ、逆に日本語の方がキマっていて、それを英訳したのでは、と思うところ、双方が混在していておもしろい。

例えば、

- I have lots of things to tell you. But I am here with no ability, nor the intention, ....to filibuster.

という部分。「長大な演説をして議事の進行を妨害し、法案の通過を遅らせる」という filibuster の意味を知らなければ、ここで笑いを取りたいということ自体わからなくなってしまうが、言葉だけではなく、英語の語順ならではのおもしろさがここにある。

だから、公式サイトにある日本語の、

- 申し上げたいことはたくさんあります。でも、「フィリバスター」をする意図、能力ともに、ありません。

といった、英文解釈の定石通りのようにしたのでは、おもしろくもなんともない。何のことかと思わせておいて、to filibuster で締めることによる妙が伝わらないからだ(官邸サイトにある動画を見ると、安倍総理は練習の成果を発揮してか、ちゃんとわずかな間を置いて最後の単語を言い、笑いを取っていた)。なお"文末に重要な要素が来る英語の語順"の翻訳をめぐっては、以前のエントリでもちょっと触れたことがある(→「不思議の国のアリス」の新訳)(→tannoy とタンノイ)。

もうひとつ、歴代駐日大使をつとめてきたアメリカの大物議員たちの名前を列挙したあとに、

- On behalf of the Japanese people, thank you so very much for sending us such shining champions of democracy.

といっているのを、公式サイトの日本語は

- 民主主義の輝くチャンピオンを大使として送って下さいましたことを、日本国民を代表して、感謝申し上げます。

としているが、champion of democracy は辞書にも出ている表現であり、「ボクシングのチャンピオン」と同じように考えるのはまずい(→「チャンピオン」ではない champion)。いずれにせよ、ここも日本語から訳したというより、最初から英語で発想したかのように読める部分だ。

また、公式サイトが「槍の穂先となりこじあけた」としている spearhead も、英語らしい言葉だと感じる。quantum leap という言葉も使っていた。

単語や表現を別にしても、対象がアメリカ人であること、つまり誰に聞かせる演説なのかを意識して書いたことが明白な部分もある。安倍の Abe を「エイブ」と読む人がいる、と言ってエイブラハム・リンカーンを想起させたうえでゲティスバーグ演説に言及するところ。

さらに、「高校生の時、キャロル・キングの曲が好きだった」と述べて、その曲 "You've Got a Friend" の歌詞を引用したうえで、その内容と呼応するような、東日本大震災の苦難とアメリカの支援「トモダチ作戦」に触れるところ(ここは日本語では「トモダチがいました」としているが、英語の原文は Yes, we've got a friend in you. である)。

こうした話の運び方は、クサいと思う人もいるかもしれないが、私は素直に「うまい!」と声をあげたくなった。まあ正直なところ、次の瞬間には、本当に安倍氏は高校生の時にキャロル・キングを愛聴していたのだろうか、という疑問も浮かんだのだが、それはあまり追及しないことにしよう。

その一方で、長くなるので具体的な引用はしないが、日本語の方にはあまりにもこなれた"訳"、というか、より自然な言い回しがあって、そこは日本語の方が元の文なのではないか、と思った部分もある。

こういったことを考えながら読んだが、もちろん正しいかどうかはわからず、確認はできない。今回のスピーチの作成の過程やウラ話をぜひ知りたいものだ。いずれにせよ、持つべきものは筆の立つスピーチライターだということはいえるだろう。

以上、とりとめのない感想になってしまった罪滅ぼしとして、英語の表現をひとつ取り上げたい。安倍氏がアメリカに留学していた時を振り返る部分である。

- Ladies and gentlemen, my first encounter with America goes back to my days as a student, when I spent a spell in California.
(私個人とアメリカとの出会いは、カリフォルニアで過ごした学生時代にさかのぼります。)

spell といえば、日本語の「スペル」にもなっている「綴る」(細かいことだが動詞であり、名詞の「綴り」は spelling としなくてはならない)、また「魔法をかける」「呪文」ということだが、このほか「ある一定の期間」「ひと続きの仕事」「発作」などの意味もある。have a long spell of hot weather は「暑い日がずっと続いている」、by spells は「交替交替で」、a spell of work は「まとまった仕事」といった具合だ。

意味は知っていたものの、私はこの演説に出てきた spend a spell という言い方は意識になかった。/spe/ で音が揃っているのもおもしろい。

コロケーションが詳しい「研究社新編英和活用大辞典」にもこの言い方は載っていなかったが、インターネットを見ると実例がいくつもあるので、使われていることがわかる。

また、私の使っている電子辞書にある Oxford Sentence Dictionary には、

- ... spent a spell in the summer of 1830 in France...
- ... had spent a brief spell working on the conservation parks in the Amazon

といった実例が採録されていた。

安倍総理の演説からは、もうひとつ取り上げたい表現があるのだが、長くなったので次回以降に書くことにしたい。

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