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clear and present danger 「今そこにある危機」と集団的自衛権の容認 [英語文化のトリビア]

安倍政権が集団的自衛権の行使を認めた。条件のひとつは「明白な危険」がある場合というものだが、これで連想した表現がハリソン・フォード主演の映画のタイトルにもなっている clear and present danger である。

本来は法律関係の言葉で、「明白かつ現在の危険」「明白かつ眼前の危険」などと訳されているが、実際には、もっと日常に即して使われている表現のようだ。

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そもそもは、アメリカで100年近く前にあった裁判に由来するという。私が愛読している「シャーロック・ホームズ」と同じ姓を持つ名判事が担当したものだ。長くなるが説明を引用しよう。

- 合衆国最高裁判所判事Oliver Wendell Holmes, Jr. がSchenk v. U.S.判決(1919)の中で示した、言論の自由に対する規制の原則;混雑した劇場内で虚偽に「火事だ!」と叫ぶ場合など、その結果明らかに急迫した害悪の危険が予測される場合には言論は合法的に規制されるというもの
(リーダーズ・プラス)

- The standard set by the Supreme Court for judging when freedom of speech may lawfully be limited. Justice Oliver Wendell Holmes, Jr., illustrated the point by arguing that no one has a constitutional right to shout “Fire!” in a crowded theater when no fire is present, for such action would pose a “clear and present danger” to public safety.
(American Heritage New Dictionary of Cultural Literacy)

しかし、手持ちの電子辞書に載っている例文は、法律と関係あるようには思えないものばかりで、しかもそのへんについての説明がない。

- attempt to prove that the Communists posed a clear and present danger to the West
共産主義たちが明白な当面の危機を西側に対して投げかけたことを証明しようという試み
(英和活用大辞典)

- The hackers' actions are a clear and present danger to our banking system.
(Oxford Collocations Dictionary for students of English)

ひとつ目の共産主義についての例文は、1960年代初めの「キューバ危機」を連想させるが、この時ケネディ大統領が行った演説にも、今回の言葉が使われていた。

- ... Nevertheless, American citizens have become adjusted to living daily on the bull's-eye of Soviet missiles located inside the U.S.S.R. or in submarines. In that sense, missiles in Cuba add to an already clear and present danger ...
(John F. Kennedy: Cuban Missile Crisis Address to the Nation, October 22, 1962
http://www.americanrhetoric.com/speeches/jfkcubanmissilecrisis.html )

ネットにあったもっと新しい実例をひとつ。気候変動と海面上昇についての記事に出てきたものである。

- "For the Maldives, climate change is no vague or abstract irritation, but a clear and present danger to our very existence... We don't want to trade paradise for an environmental refugee camp."
("SOS from a land in 'clear and present danger'"
http://green.in.msn.com/environmentalthreats/article.aspx?cp-documentid=3310616 )

私がこの表現を覚えたのは、冒頭にあげた映画の原作となったトム・クランシーの小説である。邦題としてつけられた「今そこにある危機」は、もとの法律用語の訳としてはいただけないが、エンタメ作品のタイトルとしてはなかなかいいと思う。

映画の内容はもう忘れてしまったが、確かに言論について触れた部分もあったように思う。それよりも、ハリソン・フォードが主人公のイメージにどうもあわないと感じたことの方を覚えている。

余談だが、原題をカタカナにしただけの情けない映画の邦題についてはこれまでも書いたことがあるが(→「シューテム・アップ」~カタカナの題名について)(→「ファインディング・ニモ」と洋画の邦題のこと)、日本語としてまともで、かつ作品を見たくなるようなタイトルを考えてほしいものだ。

とはいえ、スパイ小説の名作「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」 Tinker Taylor Soldier Spy が少し前に同名の映画になった際は、「裏切りのサーカス」というとんでもない邦題がつけられた例もあるので(「サーカス」とはイギリスの諜報組織のことで、それがある地名にちなんだもの)、日本語であればいいというものでもない。難しいところだ。

さらについでだが、今回の集団的自衛権についての閣議決定で、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」という条件が、英語でどう表現されていたかを引用しよう。

- According to the new conditions, Japan can come to the aid of a friendly nation if:

The attack on that country poses a clear danger to Japan’s survival or could fundamentally overturn Japanese citizens’ constitutional rights to life, liberty and the pursuit of happiness.

("Abe wins battle to broaden defense policy"
http://www.japantimes.co.jp/news/2014/07/01/national/coalition-agrees-on-scrapping-pacifist-postwar-defense-policy/#.U7Kcv0DEcfA )

英語学習のブログなので政治的なことを書くのは避けるが、個人的には、今の国際情勢を考えれば、集団的自衛権を容認するかどうかを検討することは必要だと思う。反対派の中には、そうした検討すること自体が戦争への道を開くかのような主張をして認めない人もいるようだが、かえって説得力が感じられない。

しかし、今回の安倍総理の閣議決定は、十分検討した・議論を尽くした結果とはとうてい言えないと思う。小泉首相の郵政改革でも(たとえ形だけだったと見ることもできようが)解散・総選挙というステップを踏んだ。しかし今回安倍首相は、一方的な方法で憲法の解釈を変えてしまった。集団的自衛権の行使容認そのものよりも、こうした政治手法の方が、個人的にはずっと怖いことだと思う。こちらの方がまさに clear and present danger というべきか。

過去の参考記事:
キューバ危機での「イエスかノーか」
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2009-04-20

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