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a jack of all trades は「多芸多才」か「多芸は無芸」か [注意したい単語・意外な意味]

前回の a man for all seasons からの連想で、jack of all trades を取り上げたい。この表現は「多芸は無芸」というネガティブな意味で使うのが正しいとされるが、調べてみたら、どうもネイティブスピーカーの間でもブレがあるらしいことを知ったからだ。

私はこの表現を受験勉強で「何でもできる人」のように覚えた。しかし大学生になったあと、何かで接した英語の対談で、日本人が "You're quite a jack of all trade." と言ったのに対して、相手のネイティブが、「ほめ言葉で使ったのだと思うが、これは "jack of all trade, master of none." を縮めたものですよ」とやんわりと答えているのを聞いた。

それで辞書などで調べてみて、受験勉強で覚えた時の認識が間違っていることを知った。つまり、この表現のココロは、省略して使われることがある後半の master of none にあり、むしろほめ言葉の逆で、面と向かって言うのは失礼にあたる、ということになる。

今回、短いネタとしてこれだけを書いておこうと思ったのだが、念のため英語圏のオンライン辞書を読んでみたら、このニュアンスについて書かれていないものもけっこう目につくことに気づいた。

例えば、

- a person who has many skills : a person who can do many different jobs : a person who can do passable work at various tasks : a handy versatile person
(Merriam-Webster's Online Dictionary)

- able to do a variety of different jobs
(Collins English Dictionary)

そして、後者の「コリンズ」を含め、いくつかの辞書が実例や用例として載せている英文の中には、前半だけを「ほめ言葉」として使っている(あるいは、前後関係がない短文なのでそのように受け取れる)ものがあった。例をあげると、

- He is clearly a very talented young man, a jack-of-all-trades midfield player who does everything pretty well.
Sun, News of the World (2001)

- An artist with the right technology can become a jack-of-all-trades.

さらに、Wiktionary でこの語を見ると、Etymology に「今はけなすために使うが、もともとはほめ言葉だった」という記述がある。

- 1610s, from sense Jack (“man (generic term)”). Originally a term of praise (competent in many endeavors), today generally used disparagingly, with emphasis on (implied or stated) “master of none”, as in later longer form jack of all trades, master of none.

もうひとつ、Wikipedia を見たら、後半の "master of none" は後で付け加えられたもので、やはり良い意味で使われていたという説明があった。

- ...used in reference to a person that is competent with many skills, but is not necessarily outstanding in any particular one.

The earliest recorded versions of the phrase do not contain the second part. Indeed they are broadly positive in tone. Such a Jack of all trades may be a master of integration, as such an individual knows enough from many learned trades and skills to be able to bring his or her disciplines together in a practical manner.
( ttp://en.wikipedia.org/wiki/Jack_of_all_trades,_master_of_none )

この項の Origins という小見出しの記述には、さらに詳しいことが書かれている。

- In Elizabethan English the quasi-New Latin term Johannes factotum ("Johnny do-it-all") was sometimes used, with the same negative connotation that "Jack of all trades" sometimes has today.

16世紀に「何でも屋のヨハンネス」というラテン語ふうの言葉が使われていて、この時はネガティブな意味を持っていたということだ(筆者が現代の使われ方について sometimes というやや慎重な言い方をしているのがちょっとおもしろい)。このあとの部分には、16世紀の終わりにシェイクスピアについてこの表現を使った文章があるということも書かれていて、沙翁の多才ぶりをかえって裏書きしているようでもある。

ついでだが、ジョン・F・ケネディ大統領が「ジャック」と呼ばれていたように、Johannes の英語名にあたる John のニックネームが Jack である。"man (generic term)" と上にあったように、男性一般の代名詞でもあるためか、これを使った慣用表現もあり、そのいくつかを以前取り上げたことがある。
(→before you can say Jack Robinson 「あっという間に」
(→「冬将軍」 Jack Frost と「フロスト警部」シリーズのこと
(→ダメ生徒の代表ジョニー君 (Why Johnny Can't Read)

Wikipedia の続きは、引用すると長くなるので要点を書くと、
・17世紀の初めには、英語の jack of all trades ができていたが、ほめ言葉として使われるのが普通だった("...generally used as a term of praise")。
・さらにその後、"master of none" の部分が付け加えられ、否定的な意味で使われるようになった。

ということで、英語になったあとはしばらくはもっぱらほめ言葉として使われ、そのあとに由来となったラテン語ふうの言葉の意味に「先祖返り」した、という形らしい。

なお、Wikipedia は、肯定的な意味で使う変形として、

- "Jack of all trades, master of none, certainly better than a master of one"
- "Jack of all trades, master of none, often times better than a master of one"
- "Jack of all trades, master of none, better than Jack of one trade, master of none"
- "Jack of all trades, master of some"

などをあげている。

さらにネットを見ていたら、この Wikipedia を引用して「否定的な表現だと考えていたが、もとはそうではなかったらしい」と書いている記事を見つけた。そしてそのコメント欄を見ると、「後半をつけない場合はニュートラルな意味で使っていた」とか、「他人ではなく自分について謙遜 self-deprecating する際に使っている」といったような内容が書かれていて、おもしろいと思った。

もうひとつ、「これからはスペシャリストよりもジェネラリストの時代だ!」と、前向きに「jack-of-all-trades のすすめ」について書いたウェブの記事があった。そのタイトルは "The Top 5 Reasons to Be a Jack of All Trades" で、表現そのものについて書いた内容ではないが、こんな風にも使われるようになっている、という例にはなるだろう。

ということで、「jack of all trades はほめ言葉で使うのはマチガイ」と言うのは簡単だが、実はネイティブスピーカーの間でも、けっこうブレがある表現ということになりそうである。

ただ、非ネイティブスピーカーとしては、やはりネガティブな意味で使われうるということは押さえておくべきだろう。良い意味で使う時には、上記の master of some とか master of all と言い換えるとか、それよりも冒頭の「ウェブスター」にもあった versatile というような言い方をした方が誤解されないだろう。

ついでだが Wiktionary には Synonyms として factotum, handyman, sciolist といった単語、また女性に使う jill of all trades が載っていて、参考になる。

もうひとつ余談だが、「何でも屋」「雑用係」を表す odd job という言葉がある。007の映画「ゴールドフィンガー」では、ジェームズ・ボンドの敵の部下にこの名前がついていて、「よろず屋」という、おもしろいが今では時代がかった訳がつけられていたことは以前書いたことがある(→henchman 「汚れ仕事をする手下」「取り巻き」)。

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