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steen 「数えきれないほどの」 (ラインスター「ジョーという名のロジック」) [読書と英語]

先日読んだSF小説のアンソロジーに、ネット社会の到来を60年以上前に予期していたとしか思えない作品があって驚いた。マレイ・ラインスターという作家の「ジョーという名のロジック」(1946年)で、あまりに感心したのでネットで探したら原文が見つかり、さっそく英語で再読した。

SFカーニバル (創元SF文庫)

SFカーニバル (創元SF文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1993/05
  • メディア: 文庫

この短編は、「ロジック」と呼ばれる一種のコンピューターネットワークが開発され、各家庭で利用されている未来社会が舞台だ。

ロジックは「受像機みたいな格好をして」「継電器(リレー)が縦横に配置された、回路のついたタンク」につながっていて、キーで入力する。「タンク」とは「過去において放映された番組の全記録と、森羅万象のあらゆる事実を詰め込んだ、でかいビルディング」で、「国中の全タンクに通じて」いる。

そして、計算や簿記、テレビ電話といった機能のほか、「なんでも知りたいこと、聞きたいこと、見たいことがあったら、キイを叩けば教えてくれる」。「天気予報とか、きょうの競馬で誰が一番になったとか、ガーフィールド大統領の行政期間中、誰がホワイトハウスの女主人であったとか、今日の売り物とか」がスクリーンに写し出される。

ある時、製造過程で何かが起きて、いわば突然変異体のロジックが1台誕生する。このロジックは機能を自己拡大して、検索が禁じられている情報までも得ることができるようになり、「やりたいことがあっても方法がわからない時」にそれを調べて教えるという「一歩前進したサービス」をネットワークを通じて提供し始める。そして人間たちは、一攫千金や完全犯罪の方法を含む、さまざまな相談をロジックにするようになる…。

紹介が長くなってしまったが、装置などの描写を現代にあわせてちょっと書き換えれば、初めて読んだ人は、パソコンはもちろんインターネットなど影も形もない第2次大戦直後に書かれた小説とは思わないだろう(「ウィキペディア」によると、コンピューターにディスプレイがつけられるようになったのは1960年代だそうだ)。

変異体のロジックが引き起こすドタバタは、発表当時の読者にとって(あるいは、作者自身にも)未来の空想物語にすぎなかったかもしれないが、いま読むと、単なるお笑い劇と片付けられない怖さを感じる。文句なしに傑作である。ネットを見ると、この作品を取り上げた書き込みもいくつか見つかり、以前から称賛されていたことを知った。

興味を持たれた方は実際にご一読いただくとして、今回はその原文で目にとまった、steen という単語を紹介したい。

一人称形式のこの作品の初めの方で、主人公が自己紹介する。

- I'm a maintenance man for the Logics Company. My job is servicing logics, and I admit modestly that I am pretty good. I was servicing televisions before that guy Carson invented his trick circuit that will select any of 'steenteen million other circuits--in theory there ain't no limit--and before the Logics Company hooked it into the tank-and-integrator set-up they were usin' 'em as business-machine service.
(Murray Leinster: A Logic Named Joe)

高校生も理解できる平易な英文だが、'steenteen という単語がひっかかった。辞書に向かうべきところ、先に翻訳を読んでいるということで、易きに流れる私はこの作品を収めた「SFカーニバル」をあらためて開いてみる。

- あのカースンという男がほかの何百万という回路―理論的には無限と言われる―のうちから、どれでも選ぶことのできるトリック回路を考案し、...

とあるので、大きな数を表す言葉らしい、とわかったところで辞書を引く。しかし、何となく予感があったのだが、どの辞書にも載っていない。語頭にアポストロフィ( ' )がついているのは何かを略したものか。しかし略されているとしたら何なのか想像がつかない。-teen は fifteen などの「十~」だろう。

ということで前半部分の steen を辞書で探してみたら、まさにこの単語があった。意味的にもあてはまるし、'steen という綴りも併記されていて、これでどうやら正体がつかめた。

英和辞典は、どれも umpteen とことだと書いてある。この単語は、「非常に多数の」「無数の」という意味で、以前取り上げたことがあり、英語による説明や例文はそちらを参照していただければ、と思う。

ラインスターの短編が、その 'steen にさらに -teen をつけているのは強調のためだろうか。ネットで検索したら、この作品の引用が次々と出てきたが、数は少ないがそれ以外の実例もあった。辞書に載っているわけではないが、一種の造語として英語のネイティブなら意味が取れる、といった感じではないかと思う。

なお語頭のアポストロフィだが、「ランダムハウス英和大辞典」の umpteen を見たら、

- pron.(話)多数(また ump-steen, umteen)
1918. ump(ty)(twenty などのように -ty を伴う)不定数に対する恣意的名称 +teen)

とあったので、umpsteen という綴りから ump- が落ちた形、ということかもしれないが、それ以上のことはわからなかった。ご存知の方がいらしたらご教示いただければ幸いである。

(参考記事)
・umpteen, umpteenth 「数えきれないほどの」
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2007-08-18

タグ:SF
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